干物女の色々

神谷さんの声で、やさしく殺して、私のココロを…

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言ノ葉ノ花 track02

余村:あ、店長、お疲れ様です。
店長:冷えるなあ、今夜は。雪になるんじゃないのか。な、余村、表のチラシ配り手伝ってくれ、やっぱ学生バイトだけじゃ頼りないわ。
余村:わかりました。行ってきます。
  (家電量販店のパソコン販売員として働きはじめて半年、バイトとそうかわらない契約社員としては、29歳の僕はいささか年を送っている。クリスマスイブか...いやだな。)
   はい、これ、追加のチラシだよ。僕も配るから、一緒に頑張ろう。
バイト:え?もうすぐ閉店じゃないですか。
余村:今日受け取って、明日来てくれるかもしれないだろう。
バイト:わかりました。配ります。(こんなくそおやじ、もうチラシなんかどっか捨てちゃうかな。)
余村:(学生バイトでもそっこうで首が飛びそうな言い草だったが、心の中では何を言おうが自由だ。三年前のあの朝から、僕の耳にずっと響き続けて、聞こえるはずのない人の心の声が)
   よろしくお願いします。クリスマス競りちょうです。どうぞ、店内もご覧ください。
  (心の声が聞こえるようになって、一月後には会社を辞めた。どの医療機関でも******怪しげな診療所では、神の力だとか言い出され、胡散臭さに足が***。
人に会うのが辛くて引き篭もり、彼女とも別れた。真実を知ってまで結婚するほど僕はできた人間じゃなかったし。人の心など、知って楽しいものじゃない。心は決して美しいばかりではじゃなく、むしろ汚い部分のほうが多い。悪意はまるで歯虫のように声となって、群がり続けた。僕は人を遠ざけ、そして二年半が過ぎ、このままではいけないと自分に嫌気がさして、この仕事に就いた。)
長谷部:危ない!
余村:君、大丈夫かい?ぼうとしてて、すまない。
長谷部:(余村さん)
余村:あ...(思わず返事しそうになった。でも男の唇は一文字にもひき結ばれたまま動いていない。)
長谷部:大丈夫です。なんともありません。(痛い、足、ずきずきする。)
余村:なんともなく...ないじゃないかな。立てるかい?ほら、つかまって。
長谷部:(余村さん、余村さんの手だ。余村さんの声だ。余村さん...)
余村:あ、あのう、君?
長谷部:(手、早く離さなきゃ。変に思われる。どうしよう、手も離したくない。余村さん、好きな人の手だ...)
余村:(翌日、店長から持ちかけられたのはこれまでにも何度か言われたことがある社員登用のことだった。人の心がわかるのだから、客の希望も予算もまるわかり、アプローチのよさはそのまま売り上げにつながっている。)
   すいません、有難いお話ですが、まだ自信がありませんので...
店長:条件が悪くないと思うんだがなあ...(まったく、29歳でフリーター気取りをないだろう。これだから最近のやつがな...)
余村:(ふっと気が緩めば、店長の本音が聞こえてくる。今は、心の声を塞ぐ術を覚えた。普通の会話に意識を強く集中させていたり、自分の心の声に耳を傾けていれば、さえげることができる。)
店長:まあ、その気がないなら、しょうがないな。気が変わったら、言ってくれ。
余村:(けれど、ちょっと気持ちが乱れれば、***)
   あのう、生活家電コーナーに若い人、一人いますよね。背の高い、長谷部さんとか言う...
店長:長谷部?
余村:彼も社員ですか?
店長:あ、社員だよ。真面目なんだが、どうも口の重たいやつでな。
余村:(長谷部修一、それが昨日の奇妙な男の名だった。それとなくほかの従業員に聞いてみたところ、真面目でとっつきにくい、無愛想***男だと、みんな言う。あの瞬間わかってしまった。好き、それがどういう種類のものなのかも、男なのに、ろくに口も聞いたことがないのに、あの男は自分にそういう意味で興味があるらしい。世の中にそういう性癖の人間がいるのは知っていたが、まさか自分がかかわってくるなんて、想像もしなかった。)
長谷部:お疲れ様です。
余村:うん、お疲れ様です。はい、どうぞ。お茶を飲むでしょう?
長谷部:すみません。ありがとうございます。
余村:(むっつりとした低い声、やっぱり昨日の出来事は勘違いだったんじゃないだろうか)
長谷部:(嬉しい、余村さんがお茶を入れてくれた。)
余村:(勘違いではなかったらしい。)長谷部君だよね、昨日はありがとう。その、たすけえくれて、足、大丈夫?
長谷部:平気です。どうして足、ひねったのわかったんですか?余村さんって、なんかさしがいいですね。前も薬わざわざくれたでしょう?
余村:薬?
長谷部:俺が頭痛で辛かった時、薬を買ってきてくれたことがあったじゃないですか。
余村:(忘れてた。そう言えばそんなことがあった。確か入店して間もないごろ、苦しむ心の声に気づいて、半ば強引に薬を渡した。でもまさか、あれだけのことで惚れられてしまったのか。)
長谷部:俺、そんなにいろいろ顔に出てますか?
余村:いや、その、僕は昔から病人に気づくのは得意なんだ。母が看護婦だからかな。
長谷部:そうだったんですか。
余村:(仏頂面のくせして、素直だ。お茶一杯で喜ぶなんて、プラトニックの感情なのかもしれない)
長谷部:(あ、しまった。せっかく余村さんが入れてくれたお茶なのに)
余村:もう一杯、入れようか。
長谷部:はい、ありがとうございます。
余村:(なるべくかかわらないほうがいい。そう思いながらも、嬉しそうな声を聞いてしまうと、悪い気がしなかった。それから数日後、僕と長谷部は話しようになっていた。変に気を持たさないと考える一方で、彼と話すことに心地よさを感じていた。)
   仕事熱心だね。もっと早い***、せっかくの手作り弁当***、
長谷部:それはそうですね。
余村:長谷部君、ええと、話半分で聞き流してくれていいよ、僕はほら、弁当を作ってくれる人もいないから、羨ましいんだな、きっと。
長谷部:羨ましいんですか?今度、妹に余村さんの分も作ってもらいましょうか。
余村:へえ?だから真に受けなくていいんだって。
長谷部:(余村さんの笑った顔、いい。)
余村:(まいったと思う。でも不快じゃなかった。長谷部の気持ちを知っていて、後ろ目たいけど、きまじめな男とのたわいない会話に心が和んだ。)
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